北陸信越ブロック第10期研修チーム 第3回研修会 レポート

令和3年10月23日(土)13:00~17:00
開催場所:矢口永壽工房及びzoom使用

Report

新潟青年部 藤田憲子 さん

木々の葉も色付きはじめ秋も深まる中、第三回研修会が石川県加賀市にて開催されました。
コロナ禍が落着きを見せ始めた折り、現地参加を希望したいところでしたが、2回目の研修会に続き私はこの度もオンラインで参加させていただきました。
まずは石川南支部幹事を務められる蒔絵師の谷口博山先生から、蒔絵と金継ぎについての講演を拝聴しました。漆の特性や蒔絵の技法、金粉の種類について勉強させていただきました。
また、金継ぎのお話も大変興味深くお聞きしました。破損した器物を漆で接ぎ、金だけでなく銀や白漆、黒漆等々、その器物に応じて使い分ける事で味わいが出るとお聞きして、茶人の楽しみというのは無限大だなぁと感心しました。古田織部がわざと茶碗を割って金継ぎし、景色を作ったという逸話を思い出し、なるほど気持ちが理解できるような気がしました。お稽古をとおしてお道具を丁寧に扱う事を学びますが、万が一破損してしまっても手を加えて重用しようとする心は、お茶に限らずに大切にしたいものです。
続いて副ブロック長でいらっしゃる四代矢口永壽氏から解説して頂きながら、オンラインで工房を見学させていただきました。山中温泉の美しい森を背景に伝統が感じられる工房の様子はとても素晴らしかったです。電気窯やガス窯、製作途中の作品などをズームアップで見ることができ、感激でした。職人の方が絵付けなさっている様子は画面越しではありましたが、その場の空気が張り詰めているような雰囲気が感じられ、背筋が伸びる思いでした。作品作りの厳しさ難しさをお聞きするにつけ、お道具を拝見する際の心構えを教わった気がいたしました。
研修チーム1年目は今回が最後。私はいずれもオンラインで参加しました。研修会の度にハイブリッド形式で企画していただき、遠方での研修にも気軽に参加することが叶いました。ご準備下さっているブロック役員の皆様に感謝を申し上げます。
次回以降の研修には出来る限り現地参加をさせていただき、研修チームの皆さんとの交流も楽しめたらと期待しております。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

高岡青年部 澤田 佳澄 さん

10月23日(土)、石川県加賀市の地にて第三回研修会が行われ、「蒔絵の技法と金縫いについての講演会」、「矢口工房見学」「九谷焼絵付け体験」の研修を受けました。
まずまず、谷口先生より「蒔絵の技法と金縫いについての講演会」を受けさせていただきました。蒔絵にもその用途によって、様々な技法や金粉を使い分けているという事を知りました。その技法一つ一つ繊細な仕事ですが、更に技法を組み合わせることもあるということに驚きました。
金継については金だけでなく銀ですることがあり用途やその茶碗のイメージに合わせて変えられていることを知りました。華やかなものからシックなものまで画像で拝見させて頂きましたが、元の良さを残しつつ更に金継によってより美しさを引き出されておられとても感激致しました。それも割れても大事なものを残したいという方の想いを大切にされて受け取り、一つ一つ細かく丁寧な作業であるからこそということを感じました。
その後「矢口工房見学」「九谷焼絵付け体験」をさせて頂きました。工房見学では実際の工程を理解することができました。また多くの美しい作品も見させて頂きました。
絵付けでは、研修メンバーそれぞれが使用したい用途に合わせて違う作品ができてとても楽しいものとなりました。しかしなかなか綺麗に描けず、また実際の焼き上がりの色と変化するという事でイメージもつかめずとても難しかったです。改めて作っておられる方々の素晴らしさや経験や努力がある事を感じ、一つ一つのお道具の大切さを感じました。見学させて頂いた際に、焼いてみてすべてが成功するわけではないといったお話をお聞きしたことからもその様に感じました。
この研修を通じて、一つ一つのお道具を大切にするという心を学びました。拝見の時、扱う時、どのような時もそのようにしていきたいです。そして学んだことを今後にいかし、お稽古も精進していきたいです。
北陸信越ブロックの研修メンバーの多くの方々と経験や考え方などお話する機会があり視野も広がることができました。これからの研修会や茶道を通じての多くの方々との出会いを大切にしていきたいと思いました。

石川南青年部 田中美早紀 さん

10期はコロナ渦でのスタートだったため、正直チームメンバーと直接お会いして話す機会がいつ来るのかと感じていましたが、今回地元開催ということで漸く現地参加することができました。現地参加のチームメンバーは少数でしたが、他県からの様々な年齢層の方達と交流できたのは、とても有意義であったと思います。
茶道を始めてから漆器や焼物に触れる機会が多く、また個人的にも様々な作家さんの工房を訪れたり、作品を見たりと日常的に工芸品を扱うことが多いのですが、今回おじゃましました矢口さんの工房・御宅は初めてでしたので、とても魅力的な時間でした。
前半の谷口博山先生の講演、および矢口さんの工房見学内でも終始感じたのは『伝統工芸を後世に伝えていく使命感』
恐らく双方とも親が工芸職人ということで、初めから“受け継ぐ”という道が決まっていたのかもしれません(当人にしかわからない精神的な紆余曲折は少なからずあったかと思いますが笑)が、職人としての道を進むと決めた瞬間より、自分の作品作りに妥協せず、誇りを持ち、後世によいものを残していく。この辺りの“想い”というのは、共通しているのだなと感じました。

正直なところ、伝統工芸品の需要自体は右肩下がりであると思います。茶道をしていれば手にする機会は多いですが、一般的な生活の中では、取扱いが困難な工芸品よりもプチプラな製品が好まれるのは当たり前の話です。今は100円でマグカップが買える時代。その中で数万円の工芸品が生き残っていくにはどうすれば良いか。これからの伝統工芸界の大きな課題を、研修会を通しても実際に感じとることがありました。

博山先生への質疑応答でも話しましたが、私自身はこの素敵な伝統工芸を50年後、100年後も変わらずに残っていて欲しいと感じます。国内での需要が減っているのであれば、海外のマーケットに広げられないか。茶道人口も年々減っている中で、どのようにしたら伝統文化、工芸の魅力を若い世代に知ってもらえるのか。私達一人ひとりの力で変わる未来があるかもしれません。そのようなことも研修会を通じて、他メンバーと考えていくのも面白いと思います。